2018年3月17日、Platform Cooperativism Japan(PCJ)第1回の研究会に参加してきました。PCJは、USのPlatform Cooperativism Consorsium(PCC)の日本版で、あえてひとことでいえば、プラットフォームそのものをシェアしていく制度的・技術的・社会的・文化的な実践を推進する試み、といったところでしょうか。第1回目の研究会では、以下の4人のプレゼンターによって、そもそも「プラットフォーム・コーポラティビズム」とは何か、について幅広い論点提示と意見交換がなされました。

  1. 本協会についての概要 (創設者 マティアス・サーガー)
  2. 協同組合 (前田健喜,一般社団法人JC総研協同組合研究部長)
  3. 労働と資本(マット・ノイズ,明治大学経営学部特任講師)
  4. プラットフォームビジネスとデータの所有権 (田中恵子,京都情報大学院大学東京サテライト 助教)

参加者は幅広く、学術関係者から、協同組合の関係者、フリーランスのコンサルタント、広告代理店やマーケティングの関係者、起業家、ベンチャーキャピタリストまで、さまざまな視点から「プラットフォーム・コーポラティビズム」に関心をもつ人が集まり、英語・日本語が入り乱れ、いい意味で不思議な会となりました。

私自身は、「コーポラティビズム」(日本語ではとりあえず「協同組合主義」となってます)という考え方には正直あまりなじみがなかったのですが、この研究会に参加して、とても強い興味をもつようになりました。というのも、それが、現在のプラットフォーム・ビジネスがもっている矛盾を、シェアリング・エコノミーの時代にふさわしい形で乗り越えようとする試みだったからです。

プラットフォームにおける「生産」とは?

ここでいう「プラットフォーム」とはGoogleやFacebook、Twitter、YouTubeのような広告ビジネスもあれば、KindleやiTunesのような製品プラットフォーム、UberやAirbnbのようなリソースのシェア、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureのようなクラウドサービス、GE Predixのような産業プラットフォームまで、さまざまな様態を含みます(プレゼンターの1人、マット・ノイズさんがわかりやすく整理してくれていました)。

これらの特徴は、インターネットを中心とするデジタル技術によって支えられていること、そして、ユーザー自身が何らかの生産を行っていること(これをノイズさんは”Labor”と呼びました)、にあります。つまり、プラットフォーム以外のビジネスにおいては通常、企業の側が生産の主体であるのに対し、プラットフォームにおいてはユーザーが生産の主体になっており、企業はいわば生産者と消費者を媒介する役割だけを担っているわけです。

このことが、データのオーナーシップをどうとらえるか、という課題を生んでいることを、別のプレゼンターの田中恵子さんは指摘します。特に、「プラットフォーム」を通じて収集されたユーザーの生産物(投稿した写真や動画、テキストなどを含む)や行動履歴が、一方的な利用規約のもとに企業側のオーナーシップとされてしまうため、ユーザーはサービスを利用する以上、プライバシーの侵害や過剰なマーケティングのリスクを回避できない状況に陥ってしまっているのです。

私自身は、プラットフォームにおけるブラックボックスの問題を、メディア・リテラシーの問題として研究に取り組んでいますが、一方でWebマーケティングの実践者として、ユーザーデータの経済的な重要性もよく知っている複雑な立場でもあります。企業が「サービスを提供しているのだからそこで生産されたものは企業側のものだ」としてしまうことは、いわゆる資本主義的なシステムにおいて不可避であるようにも思えます。このような社会的・経済的状況は、「プラットフォーム・キャピタリズム」と呼ばれ、企業が株主によって保有され、株主利益を短期間で最大化することが求められる現代の資本主義環境における構造的な問題と指摘されています。

つまり、必要なことは、プラットフォーム・ビジネスを運営している企業を、ユーザーの権利を侵害していると批判することで経済合理性に反する判断を促すことよりも、「プラットフォーム・キャピタリズム」と呼ばれるような経済システムのオルターナティブを構想することです。そのオルターナティブの1つが、「プラットフォーム・コーポラティビズム」だということなのです。

TRADITIONALなプラットフォームとFAIRなプラットフォームの違いHEXALINAより

キャピタリズムのオルターナティブとしての「協同組合」

この、「コーポラティビズム」を実践した組織が、実は古くからある「協同組合」という組織体です。私は、「生協」や「農協」など、身近にある「協同組合」自体の存在はよく知っているつもりでしたが、それがどのようなシステムで運営されているかは、正直あまり知りませんでした。むしろなんとなく古くさい、硬直した組織のように勝手に思っていたのでした。

しかし、プレゼンターの1人である前田健喜さんは、この「先入観」を完全にひっくり返してくれました。

株式会社が、株主によって保有され、その議決権が保有株数(つまり資本力)によって決定されるのに対し、協同組合は、ユーザー自身によって共同保有され、その議決権は原則として1人1票の民主主義に支えられているのが特徴です。この協同組合方式は、国際的にも広く利用されている運営形態で、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)においても、協同組合が民間セクターの重要な形態と位置づけられているそうです。協同組合は、決して「古くて硬直した」運営形態などではなく、国際的にはむしろ「新しくて持続可能な」運営形態のひとつというわけです。

日本に昔からある「協同組合」のイメージはいったんおいておくとして、その民主的な運営形態だけを新しいビジネスに適用する可能性を考えるとき、本当の意味でユーザー同士が利益を享受し適切にシェアしあえる、シェアリング・エコノミーの次世代の姿がみえてきます。

これまでのプラットフォームは、そのマッチング技術とマーケティングに資本が必要だったために、「プラットフォーム・キャピタリズム」という中央集権型のシステムに依存してきました。しかし、ブロックチェーンのように分散型の意志決定を支える技術が確立し、ユーザー同士の生産と消費がより直接的に接続しうる現代においては、コミュニケーションのプラットフォームを公共的なサービスとして共同保有する経営方式は、持続的で現実的な選択肢として十分ありえるのではないか。そしてそのようなオルターナティブが存在しうることこそが、プラットフォームがブラックボックス化することや、特定の企業がユーザーの情報を独占することのリスクを低減しうるのではないか。そんな感想をもった刺激的な研究会でした。


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