読書ログ 2016年8月

2016年8月の読書メーター

bookmeter201608
読んだ本の数:35冊
読んだページ数:10851ページ
ナイス数:6ナイス


情報批判論 情報社会における批判理論は可能か情報批判論 情報社会における批判理論は可能か感想
重厚な情報社会の基礎理論をめぐる論考。ポストモダン的な悲観論から一歩進めて、内在的な経験主義に基づく、コミュニケーション中心的、脱表象的な「情報社会」論を展開する。現象学やマクルーハンを読みなおしつつ、主体客体関係の前提となる超越論的な視点を排除することを強く意識する。「情報」の「今-ここ」性、非線形性、無秩序性、すなわち「表象」的な物語ではない性質を改めて指摘し、フロー、つまりコミュニケーションを起点とした発想の重要性を説く点は力強さを感じた。
読了日:8月31日 著者:スコット・ラッシュ


「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))
読了日:8月30日 著者:山本七平


角川インターネット講座 (8) 検索の新地平 集める、探す、見つける、眺める角川インターネット講座 (8) 検索の新地平 集める、探す、見つける、眺める感想
平易な検索エンジン入門書、という感じ。
読了日:8月29日 著者:


意思決定と合理性 (ちくま学芸文庫)意思決定と合理性 (ちくま学芸文庫)感想
サイモンの講演録ということで平易ですぐに読めた。合理的経済人モデルの限界についてはすでに新しいものではないが、直観や進化論についてサイモン自身が言及している視点は面白かった。
読了日:8月27日 著者:ハーバート・A.サイモン


「わかる」ということの意味 新版 (子どもと教育)「わかる」ということの意味 新版 (子どもと教育)感想
非常に平易だが、教育の枠を越えた、本質的な人間の文化的活動の意味を考えさせられる一冊。何かを「与えられたもの」として捉えるのではなく、世界を変えていく実践のうちに「わかる」が立ち現れる。
読了日:8月25日 著者:佐伯胖


ハイデガーとマクルーハン―技術とメディアへの問いハイデガーとマクルーハン―技術とメディアへの問い感想
ハイデガーとマクルーハンの思想的なつながりと言うよりは、ハイデガーの「技術への問い」を読むことが中心となった一冊。ハイデガーの技術論の解説本としては丁寧で良いが、それがマクルーハンを含む現代的なメディア論とどう接続できるのかは明らかではなく、少し期待値とは違った内容だった。
読了日:8月24日 著者:合庭惇


サイバースペースはなぜそう呼ばれるか+ 東浩紀アーカイブス2 (河出文庫)サイバースペースはなぜそう呼ばれるか+ 東浩紀アーカイブス2 (河出文庫)感想
東流のポストモダン論の原点として、刺激的な一冊。ラカンとデリダを中心に、象徴界と想像界の境界問題として情報社会的なダイナミズムを捉える。ラカンの術語が独特なのでとっつきにくいが、解説にあるとおり、「大きな物語」の喪失とその代補の言説として読むべきだろう。今となっては古い前提もあるが、狭い意味での情報社会論ではなく、社会全体の思想的な変容が精度や技術とどう同期しているか、大きく考えるためのヒントが詰まっている。
読了日:8月23日 著者:東浩紀


人工知能はなぜ未来を変えるのか (中経の文庫)人工知能はなぜ未来を変えるのか (中経の文庫)
読了日:8月23日 著者:松尾豊,塩野誠


システムの科学システムの科学
読了日:8月20日 著者:ハーバート・A.サイモン


はじめての構造主義 (講談社現代新書)はじめての構造主義 (講談社現代新書)感想
非常にわかりやすい、レヴィ=ストロースを中心とした構造主義の解説本。構造主義が西洋的な主体および真理観を否定したという流れではあるが、「構造」がイデア的に記述されており、事実上の「真理」であることに対しては意識的な説明はない。きちんと触れられていないが、ポスト構造主義はこの部分を批判しているのではないだろうか。ともあれ、シンプルに分かりやすかった。
読了日:8月19日 著者:橋爪大三郎


重層的な世論形成過程―メディア・ネットワーク・公共性重層的な世論形成過程―メディア・ネットワーク・公共性感想
インターネットメディアにおける社会的ネットワークの形成や、世論の構成についての論考を期待して読んでみたものの、ほとんどがマスメディアを中心とした既存の概念の整理・追試によるものであり、古さが否めない。筆者の言う「社会的リアリティ」そのものが大きく変容する中で、静的かつ分析的なアプローチが有効性を持ちえるのか、疑問に感じてしまった。マイクロ=マクロリンクを標榜するのであれば、もう少しマクロな動態について考察がほしいところ。
読了日:8月18日 著者:安野智子


技術屋(エンジニア)の心眼 (平凡社ライブラリー)技術屋(エンジニア)の心眼 (平凡社ライブラリー)感想
「技術」と「科学」の関係について改めて考えさせられる。本来技術は暗黙知的なものであり、形式化できない残余があるということは、直観的にはわかっているはずなのに、「科学」や「論理」的思考の枠組みに囚われた近代社会の「個人」は、論理が先行するかのように錯誤してしまう。職人気質の古い発想のようでいて、ある意味素朴なポストモダン的な発想でもある。デジタルメディアの時代の「デザイン」に、この「心眼」をどう捉えるべきか、改めて考えてみたい。
読了日:8月18日 著者:E.S.ファーガソン


日本の難点 (幻冬舎新書)日本の難点 (幻冬舎新書)感想
良くも悪くも、宮台真司のスタイルというのがわかる一冊。せっかく重厚な知的バックボーンがあるのに、攻撃的で大人げない表現がもったいない(おそらくそれが良さ)。逆に言うと、ポストモダン的な思想、自己言及性がまさに自己言及的に「適用」されており、社会学の実践としては非常に目からウロコ的な感じがした(こんなノリでこんな概念使うんだ、的な)。確かに著者自身豪語するとおり、これ以上優しくは書けないのではないか。
読了日:8月17日 著者:宮台真司


幼児の対人関係 (メルロ=ポンティ・コレクション 3)幼児の対人関係 (メルロ=ポンティ・コレクション 3)
読了日:8月17日 著者:モーリスメルロ=ポンティ


自己言及性について (ちくま学芸文庫)自己言及性について (ちくま学芸文庫)
読了日:8月16日 著者:ニクラスルーマン


生権力の思想―事件から読み解く現代社会の転換 (ちくま新書)生権力の思想―事件から読み解く現代社会の転換 (ちくま新書)感想
不可能性の時代と重なる論考も多いが、フーコーの権力論との結びつきによって、北田のつながりの社会性、東の情報自由論と接続している。宮崎事件の記述が若干クドイ。個人的には、管理型権力が個人の同一性を客体化しているという論考は、斬新ではないものの納得感があるものだった。
読了日:8月16日 著者:大澤真幸


不可能性の時代 (岩波新書)不可能性の時代 (岩波新書)感想
不可能性という<他者>、つまり否定項がある種の「裏口の」第三者の審級であるという「不可能性の時代」、まさに大澤理論の<他者性>というダイナミズムがよく現れた論考だった。ただ、本人も著述している通り、どうしてもポストモダン的な終末観、絶望感が拭えない展開であり、ネットワークやメディアについての踏み込んだ希望的な論考が欲しいところ。8年前の本だが原理主義と多文化主義の話は、むしろ今顕在化が激しくなっている問題として、リアルに読める。
読了日:8月15日 著者:大澤真幸


社会システムの生成社会システムの生成感想
重厚な大澤真幸の「社会システム論」の理論。基軸となる第三者の審級の理論を、ルーマンやフーコーの思想と重ね合わせつつ、様々な角度で「生成」してきた過去の論考の集成。論集のため内容的な重複はあるものの、多角的に大澤理論の生成過程を味わえる。基礎理論に相当する論考が多いため、大澤の他の著書を読んで応用可能性の広さを知ってから読んだ方が奥深さを感じるかも知れない。
読了日:8月15日 著者:大澤真幸


思想地図〈vol.3〉特集・アーキテクチャ (NHKブックス別巻)思想地図〈vol.3〉特集・アーキテクチャ (NHKブックス別巻)感想
レッシグの「CODE」の直後に読んだので「アーキテクチャ」論を多面的に読むことができて面白かった。東浩紀、宮台真司のアーキテクチャに対する姿勢は読めたが、北田暁大の「メディア論との関係」が軽く触れただけで踏み込まれておらず残念。
読了日:8月13日 著者:


CODE VERSION2.0CODE VERSION2.0感想
インターネット時代の制度論として非常に完成度の高い議論を展開している。この第1版が1999年というのはかなり先進的だったのではないか。残念ながら、この20年で政治がこの提言に対応できているとは言い難いが、逆に言うと今でも重要な視点がたくさんある。主張は極めてアメリカ的ではあるが、アーキテクチャが公的ではなく私的に課せられるものであること、そして、その存在を意識せずとも規制ができるものであること、それでもなお、国家主義と自由主義のバランスをとるために意識すべき最重要の視点であることを教えてくれる。
読了日:8月13日 著者:ローレンス・レッシグ


技術への問い (平凡社ライブラリー)技術への問い (平凡社ライブラリー)
読了日:8月12日 著者:マルティンハイデッガー


メディア論―人間の拡張の諸相メディア論―人間の拡張の諸相感想
今更ながらメディア論の古典を通読。「メディアはメッセージである」の本質は、コンテンツ自体のメディア依存性、メディアの本源的多重性を象徴的に示したものと理解した。西洋文化を表音文字の文化として相対化する視点も当時の構造主義的な思潮と同期するもので、それを明確にするためにある意味強烈な技術決定論的視座を持ち込んでいる。西洋的な理念的パラダイムを相対化し、身体性とインタラクションに着目した視点は、今となっては当たり前だが当時としては先進的だったのではないか。
読了日:8月12日 著者:マーシャルマクルーハン


動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)
読了日:8月11日 著者:東浩紀


科学が作られているとき―人類学的考察科学が作られているとき―人類学的考察感想
まさに「人類学的」考察であるが故に、前半部分は時に主張の核心がみえずらく、読みやすさに反して読み解きにくかったが、後半のアクターネットワーク的な考察に進むにしたがい、全体像が見えてきた。社会構成主義ではないと主張しているものの、実質的には社会構成主義と極めて近い立場であり、科学的「事実」の認定がネットワークに依存していることを描き出す視点は、素朴な「自然科学」観を見事に打ち砕く。ネットワークという「分析可能」な概念装置の可能性を切り開いた研究としても重要。
読了日:8月11日 著者:ブルーノラトゥール


シンギュラリティは近い [エッセンス版] 人類が生命を超越するときシンギュラリティは近い [エッセンス版] 人類が生命を超越するとき感想
人工知能が人間を超えていく技術的特異点(シンギュラリティ)を、指数関数的なデータによって予測する本。データそのもののインパクトはそれなりに理解できるものの、内容的にはSFと言ってよく、その未来像にはあまり共感できない。心身問題や身体性についての言及も多少あるものの、深く踏み込まず、素朴な実在論に基づく、アメリカ的科学礼賛イデオロギーがにじみ出ていてついていけない、というのが正直なところ。
読了日:8月9日 著者:レイ・カーツワイル


哲学マップ (ちくま新書)哲学マップ (ちくま新書)感想
平易でわかりやすい。若干物足りない感もあるが、そういう位置付けの本。最後のブックガイドが意外と良いかも。
読了日:8月9日 著者:貫成人


グーグル化の見えざる代償 ウェブ・書籍・知識・記憶の変容 (インプレス選書)グーグル化の見えざる代償 ウェブ・書籍・知識・記憶の変容 (インプレス選書)
読了日:8月9日 著者:シヴァ・ヴァイディアナサン


一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル感想
情報社会論としてグッときた本。 ルソーの「一般意志」を集合的無意識の可視化という現代的なテーマとして蘇らせ、進化させた意欲的な論考。人間の動物的な反応の記録を可視化することで、民主主義の概念自体の新たな枠組みの可能性を提示する。カント的な理性主義から、ハバーマスに至る熟議、公共圏の思想をも乗り越え、データの可視化をある種のアーキテクチャーとして据える発想は、個人的にはとてもしっくりきた。
読了日:8月8日 著者:東浩紀


〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則感想
近未来の社会像について、12の動詞をキーワードに、「変化」という観点でわかりやすくまとまっている。特に目新しい話はないが、現代的なテクノロジーと社会の関係を整理するのに良い本だった。いわゆるネットのコミュニティ的性格、ソーシャルメディアのソーシャル性のあたりには、やはりアメリカ人的な個人主義・自由主義文化がにじみ出ており、メタ的に面白い。
読了日:8月7日 著者:ケヴィン・ケリー,服部桂


そうだったのか現代思想 ニーチェからフーコーまで (講談社+α文庫)そうだったのか現代思想 ニーチェからフーコーまで (講談社+α文庫)
読了日:8月4日 著者:小阪修平


ウェブ社会の思想―“遍在する私”をどう生きるか (NHKブックス)ウェブ社会の思想―“遍在する私”をどう生きるか (NHKブックス)感想
数学的民主主義と工学的民主主義というアーキテクチャーの問題としてウェブ社会を読み解こうとする視座は面白い。全体を通して粒度感というか、ピントが甘い感じがしてしまってどうもしっくりこなかった。
読了日:8月4日 著者:鈴木謙介


24/7 :眠らない社会24/7 :眠らない社会感想
不眠、という切り口で「管理社会」的な現代の様相を捉える。「注意経済」論的な流れを汲む議論が中心で、社会の変化のスピードとその構造的な加速化を論じるものの、メディア環境に関する考察はあまりない。議論が散漫な印象があり、貫く思想が読み取れなかった。
読了日:8月3日 著者:ジョナサン・クレーリー


増補 広告都市・東京: その誕生と死 (ちくま学芸文庫)増補 広告都市・東京: その誕生と死 (ちくま学芸文庫)感想
平易な記述であっという間に読めた。資本という運動、そして消費社会論というメディア論的、社会学的な基本思想を、渋谷という切り口でわかりやすく示してくれる良書。
読了日:8月3日 著者:北田暁大


「情報社会」とは何か? 〈メディア〉論への前哨「情報社会」とは何か? 〈メディア〉論への前哨感想
個々の論点、技術をめぐる哲学的論考については面白く、「情報社会」を運動として捉え、ネットワークメディアのパラダイムを関係志向的に解釈する枠組みは興味深い。一方、全体を貫く「何か」が掴みにくく、最終的な日常実践における「思想」として視座を与えてくれるかというと少し弱い。
読了日:8月3日 著者:大黒岳彦


グーグル・アマゾン化する社会 (光文社新書)グーグル・アマゾン化する社会 (光文社新書)感想
多様化が逆説的に一極集中を生むというダイナミズムは、今でも古さを感じさせない、情報社会論としては秀逸な視座。特に複雑性の縮減、スケールフリーネットワークの構造まで踏み込んでいる点は面白い。技術決定論的発想ではないが、技術決定論的記述が目立つのは少し残念。
読了日:8月1日 著者:森健
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