2016年9月の読書メーター
読んだ本の数:31冊
読んだページ数:9450ページ
ナイス数:37ナイス
弱いつながり 検索ワードを探す旅の感想
一般向けに東浩紀流の思想を、偶然性との出会いをキーワードに語るエッセイ。世界は言葉だと考えてしまう現代思想的な発想は無限退行であり、だからこそモノ、現物が大事だという素朴なメッセージ、そして、動物的な憐みの感情で向き合うこと、平易だが深いテーマである。哲学の「役に立たせ方」として秀逸な一冊。
読了日:9月29日 著者:東浩紀
コンビニ人間の感想
普通とは何か?暗黙の同調圧力は、確かに、縄文時代から変わっていないのかもしれない。コンビニというある種のテクノロジーへの隷従に救いがあるのか?象徴的に考えさせられる。
読了日:9月28日 著者:村田沙耶香
インターネットは民主主義の敵かの感想
10年以上前の著作とは思えない汎用性をもったインターネット時代の民主主義論。特に中心となる主張は、消費者主権と市民主権は異なるということであり、消費者主権を推し進める「パーソナライズ」されたフィルタリングは、「見たいものしか見ない」ことによる集団分極化を招き、市民として必要となる共有体験の機会を失わせるという警鐘である。政治論というよりも、一種のメディア・リテラシーとして、多様な社会だからこそ必要となる「共有体験」をとらえなおして行くべきではないだろうか。
読了日:9月28日 著者:キャスサンスティーン
角川インターネット講座 (14) コンピューターがネットと出会ったら モノとモノがつながりあう世界へ
読了日:9月28日 著者:
人工知能のための哲学塾の感想
人工知能研究者による意欲的な哲学論考。セミナーの講義録でもあるので内容は平易でわかりやすい。理系の視点から心脳問題や身体性、アフォーダンスを読み解くことで、還元論と一線を画した、知能の構成論的アプローチに取り組む。フッサールに始まり、メルロ=ポンティで終わるという絶妙な構成。デカルト、記号論、デリダにも言及し、知能の理解を一段深く掘り下げようとする。若干つまみ食い感は否めないものの、実践的構成論としての哲学としては秀逸。
読了日:9月27日 著者:三宅陽一郎
科学哲学への招待 (ちくま学芸文庫)の感想
科学史・科学哲学の入門書として、教科書的な網羅性と、現代的な課題感を平易に伝えてくれる良書。個人的には、社会学的・存在論的な踏み込みについては物足りない印象。
読了日:9月26日 著者:野家啓一
ネット検索革命の感想
Googleを中心とした検索エンジンの社会的影響と認知のあり方について、その脅威を警告する書。特に、ページランクによる「偏向」と人間の知識形成への影響について、網羅的で丁寧な論考が重ねられている。過度に悲観的な論調でもなく、また、技術礼賛でもなく、インターネットの社会的影響を冷静に見つめ直せる良書。未来像については古さが感じられるものの、主要な論点については現在も有効な視座である。
読了日:9月25日 著者:アレクサンダー・ハラヴェ
アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))
読了日:9月24日 著者:フィリップ・K・ディック
角川インターネット講座 (3) デジタル時代の知識創造 変容する著作権
読了日:9月23日 著者:
一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)
読了日:9月20日 著者:ジョージ・オーウェル
デジタル・マクルーハン―情報の千年紀への感想
マクルーハンの解説本としてはわかりやすく、重要なポイントがレヴィンソン独自の視点で、インターネットの初期の展開を踏まえて記述されている。当然ながら、マクルーハンの原著をすでに読んでいると、若干冗長な感じがしてしまう。1999年という絶妙に過渡期のデジタルメディア状況に書かれたことで、今から読むとどうしても物足りない点があるのは致し方ないところ。
読了日:9月19日 著者:ポールレヴィンソン
科学技術実践のフィールドワーク―ハイブリッドのデザイン (せりかクリティク)の感想
ラトゥールおよびカロンのアクターネットワーク理論を援用した論文集、という感じ。アクターネットワーク理論の応用範囲を概観するには良いが、同時にバラバラ感、物足りなさ、掴みどころのなさを感じてしまう。ラトゥールのもともとの思想に依拠するというよりも、都合の良い方法論的枠組みとして援用されている傾向が強い気がする。なんとも評価のしにくい本。
読了日:9月18日 著者:
グーグル革命の衝撃 (新潮文庫)の感想
約10年前の、SNS前夜、スマホ前夜にあたる2007年のグーグルの姿を取材し、検索の「支配」に警鐘を鳴らす。ウェブマーケティングの現場では常識レベルの内容ではあるが、本質的な論点は今も変わっておらず、よくまとまった良書と言える。
Yahooが沈み、iPhoneもtwitter もまだ爆発する前、グーグルが最もトラフィックを寡占していた時代だったのかもしれない。そういう危機感がにじみ出ている。
読了日:9月17日 著者:NHKスペシャル取材班
角川インターネット講座 (2) ネットを支えるオープンソース ソフトウェアの進化の感想
内容的には非エンジニア向けということもあり、平易で特に前半は退屈な展開。プログラミング教育の章は面白かった。個々の著者は現場の一線級でそれぞれ専門性があるのだろうが、全体的に内容の重複も多く、編集がイマイチなのが残念。
読了日:9月16日 著者:法林浩之,久野靖,阿部和広,吉岡弘隆,やまねひでき,瀧田佐登子,鵜飼文敏
レヴィナス―何のために生きるのか (シリーズ・哲学のエッセンス)
読了日:9月15日 著者:小泉義之
フーコー入門 (ちくま新書)の感想
フーコーの思想をその背景から歴史的にたどった、わかりやすい解説本。単独で原著に当たる前に、文脈整理ができる。個人的には権力論の系譜の理解に役立った。
読了日:9月15日 著者:中山元
数値と客観性――科学と社会における信頼の獲得の感想
客観性の成立要件について、科学論・科学史的な視座から論考を重ねる。客観性や実証主義について専門家知識の信頼性との関係性をもとに批判的に記述する点は面白いが、科学の成立そのものについては中立的な立場であるため踏み込みが弱く感じてしまう。ラトゥールやフーコーにも言及があるものの、社会的構成については触れた程度にとどまっており、個人的には物足りない印象。
読了日:9月14日 著者:セオドア・M・ポーター
監獄の誕生―監視と処罰の感想
フーコーの著作ということで構えて読んでみたが、難しいところはあまりなく、素直に読めた。やはり規律・訓練権力論の第三部がメイントピック。東浩紀らの環境管理型権力という言説もあるが、情報社会におけるメディアが権力化していること、そしてビッグデータがパノプティコンとして機能していることを踏まえると、フーコーの理論はそのまま現代に応用できそうに思える。規律・訓練型権力が、近代的自己の構成と「科学」に及ぼした影響については示唆にとどまっており、他の著書も読む必要がありそうだ。
読了日:9月13日 著者:ミシェル・フーコー
角川インターネット講座 (12) 開かれる国家 境界なき時代の法と政治の感想
情報社会における国家観について、敢えて異なる立場の論者を集め、「国境」という概念がどうありうるか、を問う。編集方針上致し方ないところだが、個々の議論についてはオムニバスっぽく、もう一歩踏み込んでほしいところ。とはいえ、既成概念そのものを疑う複数の視座が提示されており、示唆に富む本であることは間違いない。
読了日:9月12日 著者:
角川インターネット講座 (11) 進化するプラットフォーム グーグル・アップル・アマゾンを超えての感想
基本知識の整理という感じ。角川インターネット講座のシリーズは深い本もあるのだが、この本は残念なくらい表層的な、浅くて退屈な本だった。どの著者も経営学的に鋭いわけでもなく、思想的な何かも感じられなかった。
読了日:9月10日 著者:
嗤う日本の「ナショナリズム」 (NHKブックス)の感想
一言で評を述べることは難しい、ある意味メタ的な、私自身の立ち位置を問われるような、いい意味で複雑な本だった。あとがきにもある通り、北田自身のポジション、リアルが、まさにアイロニカルに現れた著作。このリアルが自分自身にも伝わってくる、不思議な本。超越的な審級を失ったポスト80年代において、繋がりの社会性というコミュニケーションの連鎖に「自己承認」の欲望を託していくゾンビは、逆説的に「超越的なもの」を渇望しているのではないか。宮台の「コミットメント」を的確に評しつつ、もがく姿をさらす終章に誠実さを感じた。
読了日:9月10日 著者:北田暁大
都市のドラマトゥルギー (河出文庫)
読了日:9月9日 著者:吉見俊哉
信頼―社会的な複雑性の縮減メカニズムの感想
複雑性の縮減のため、あえて「情報を過剰利用して将来を規定するという、リスクを冒す」のが信頼という行為。ルーマンの本としてはかなり読みやすく、社会システム理論の機能分析的な応用としても具体性があって面白かった。
読了日:9月7日 著者:ニクラス・ルーマン
Google問題の核心――開かれた検索システムのために
読了日:9月7日 著者:牧野二郎
社会理論と機能分析 (現代社会学大系)
読了日:9月6日 著者:R.K.マートン
接続された心―インターネット時代のアイデンティティの感想
1995年、インターネットが新たなフェーズに踏み出したまさにその只中に書かれた本書は、当時の期待と不安に満ちた「画面上の生活」の様相を、とても良く伝えてくれる。インターネットがポストモダンという思想における「非連続性」「脱中心性」を体現するモデルであるという指摘は、今も有効な視点である。一方、大半の事例がMUD(当時のオンラインコミュニティ)におけるコミュニケーションに依拠しており、SNSの時代から振り返るととてもファンタジックな感じがしてしまう。
読了日:9月6日 著者:シェリータークル
ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていることの感想
テクノロジーによって人間の認知的構えが大きく変容させられることを、脳の可塑性とネットメディアの分散的性質の相互作用のダイナミズムとしてとらえた良書。翻訳のタイトルが悪く、扇情的な本と思われがちだが、非常に緻密に冷静に、マクルーハン的な視座を踏まえつつ、脳科学とコンピューターサイエンスの知見を丁寧に追いながら、「深い」「直線的」思考の終焉のリスクを描き出す。単なる技術批判ではなく、テクノロジーとどう向き合って文化を築いていくか、真摯に向き合うための本として、おすすめできる。
読了日:9月4日 著者:ニコラス・G・カー
単純な脳、複雑な「私」 (ブルーバックス)の感想
語り口は平易だが、非常に本質的な内容をとてもわかりやすく解説している良書。内容としてすごく新しいものではないが、無意識と呼ばれる決定論的な過程が先行していること、ニューラルネットワークや創発、自己言及など、面白いテーマばかり。文系側の人間としてはもう少し「意識」や「存在」に深い意味を持たせたくなるが、「身体」をキーに決定論を乗り越える還元論の方向性が少し見えてくる一冊。
読了日:9月3日 著者:池谷裕二
象徴の貧困〈1〉ハイパーインダストリアル時代の感想
現代社会を、「ポストモダン」ではなく「ハイパーインダストリアル」に象徴される「ハイパーモダン」と捉え、マーケティングという装置が、人間の「個体化」を不可能にし、「われわれ」を「みんな」という特異性を失った、すなわち自由を失った存在として描く。ネットワークのエージェントモデルを「昆虫化」と捉える見方は、極端ではあるものの、ネットワーク理論の隆盛そのものが、人間から特権性を奪っている証左であることを気づかせてくれた。
読了日:9月2日 著者:ベルナールスティグレール
角川インターネット講座 (1) インターネットの基礎情報革命を支えるインフラストラクチャーの感想
インターネットの歴史と、基礎的なテクノロジーおよび思想について、村井純みずからが丁寧に解説。非常に平易でわかりやすい。技術論は基礎中の基礎のため、知識の整理という感じだが、TCP/IPの、「着信を保証しない」という「思想」は、繰り返し本書でも強調され、インターネットの自律分散性とともに重要なポイントであることに気づかされた。文系的にはポストモダン社会におけるコミュニケーションの誤配可能性を具現化したプロトコルがTCP/IPだという解釈も成り立ちそうである。
読了日:9月1日 著者:村井純,砂原秀樹,ヴィントン・グレイ・サーフ
インターネットについて―哲学的考察 (Thinking in action)の感想
2001年、まさにインターネットの「リスク」が顕在化した時期の、ある種の「悲観論」を代表する一冊。メルロ=ポンティ的な身体観と、キルケゴールのコミットメントに依拠しつつ、カーツワイル的な拡張論の原理的な不可能性を、非常にシンプルかつわかりやすく、身体の「今ーここ」性を論拠に説いていく。サーチエンジンの捉え方などは古さを感じざるを得ないが、本質的なメッセージとしての有効性は今も変わらない。
読了日:9月1日 著者:ヒューバート・L.ドレイファス
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